
パーキン病の患者さんの中には、腰痛や足のしびれの相談をされる方が多くいます。
その際に「脊柱管狭窄症」と診断されたと言われることもありますが、詳しく話を聞いてみると、その症状が本当に脊柱管狭窄症によるものなのか疑問に思うことがしばしばあります。
今回は、腰部脊柱管狭窄症について、最新の研究やガイドラインをもとに詳しく解説していきます。
1. そもそも腰部脊柱管狭窄症とは?
腰部脊柱管狭窄症とは、背骨の中にある脊柱管(せきちゅうかん)が狭くなり、神経が圧迫されることで痛みやしびれを引き起こす病気です。
主な原因は加齢による変性で、椎間板の変性や靭帯の肥厚、骨の変形などによって脊柱管が狭くなります。その結果、神経が圧迫されて以下のような症状が現れます。
- 歩行時に足のしびれや痛みが出る ※これを間欠性跛行といいます
- 休憩すると症状が軽くなる
- 腰を反ると痛みが増し、前かがみになると楽になる
- 下肢の筋力低下や感覚異常
腰部脊柱管狭窄症は高齢者に多くみられますが、すべての腰痛やしびれがこの病気によるものとは限りません。
2. 脊柱管狭窄症の診断はどうやって決まる?
脊柱管狭窄症の診断は、日本整形外科学会の診療ガイドラインに基づき、以下の3つの要素を総合的に評価して行います。
① 主な症状
- 間欠性跛行(歩くと足のしびれ・痛みが出るが、休むと回復する)
- 坐骨神経痛や下肢のしびれ・痛み
- 腰を反ると痛みが増し、前かがみになると楽になる
- 排尿・排便障害が伴う場合は重症の可能性がある
② 身体診察(理学所見)
- 神経学的評価(筋力、腱反射、知覚異常の有無)
- 腰部の可動域や痛みの出方の評価
- 直立・前屈・後屈での症状変化
③ 画像診断(MRI・CT・X線)
- MRI:脊柱管の狭窄の有無、神経圧迫の程度を確認
- CT:骨性の狭窄や変形の評価
- X線:椎間板の高さ、骨棘形成の確認
ただし、画像所見のみで診断を確定することは推奨されていません。
ガイドラインでは「症状が画像所見と一致しない場合は慎重に判断すべき」とされています。
3. 画像所見と症状が一致しないことも!
実は、MRIやCTで「脊柱管が狭くなっている」と診断されても、痛みやしびれがない人も多いことがわかっています。
また逆に、「画像では異常が軽度なのに、強い痛みを感じている人」もいます。
最新の研究から
最近の研究では、画像診断と実際の症状の関連についてさまざまな報告がされています。
- 「腰部脊柱管狭窄症における MRI 画像の分析方法の検証と臨床的動作指標との関係」
- 研究結果:MRIでの狭窄の程度と、実際の歩行距離や痛みの強さには有意な関連がないことが示された。
- 論文URL:https://researchmap.jp/t-tsukamoto/published_papers/13781526/attachment_file.pdf
- 「変形性腰椎症・腰部脊柱管狭窄症の画像読影」
- 研究結果:高齢者の多くはMRIやCTで脊柱管が狭くなっているが、症状のある人は一部だけ。
- 論文URL:https://www.m3.com/clinical/news/1202985
- 「腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン改訂第2版」
- 研究結果:MRIやCTだけで診断するのではなく、患者さんの症状や身体診察を重視するべき。
- 論文URL:https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/member/topics/cervical_spine_201014.pdf
- 「Associations between radiographic lumbar spinal stenosis and clinical symptoms in the general population: the Wakayama Spine Study」
- 研究結果:50歳以上の方にMRI検査をしたところ77.9%が脊柱管狭窄を示したが、実際に症状を認めたのは12.9%だった。
- 論文URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23473979/
このことからも、「症状の有無に関わらず、画像所見で脊柱管狭窄症を認める可能性は高い」ということが言えるのではないでしょうか。このように、画像診断だけに頼るのではなく、実際の症状をしっかり見ることが大切なんです。
4. パーキンソン病患者さんの場合
パーキンソン病患者さんの中には、脊柱管狭窄症の診断を受ける方が多いですが、詳しく話を聞くと「典型的な脊柱管狭窄症の症状とは異なる」ケースが少なくありません。
例えば、
- しびれや痛みが間欠的ではなく常時ある
- 前かがみになっても楽にならない、むしろ痛みが悪化する
- 腰部や下肢の痛みが日によって変化する
このような場合、脊柱管狭窄症ではなくパーキンソン病の影響による筋緊張や神経の過敏性が関係している可能性があります。
このため、「脊柱管狭窄症」と診断されたとしても、本当にそれが主な原因なのか、慎重に考えることが大切です。
まとめ
1.パーキンソン病患者さんが「脊柱管狭窄症」と診断されても、症状が一致しないことがある。
2. 診断には「症状の聞き取り」「身体診察」「画像検査」の3つが必要。
3.画像診断と症状が必ずしも一致するとは限らない。
パーキンソン病患者さんの腰痛やしびれが、本当に脊柱管狭窄症によるものなのか慎重に見極めましょう。
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