【10日間無料】PD病専門フレイル予防サロン 詳細

起き上がれないのは「腹筋が弱い」だけではない

今回は、「腹筋が弱くなったから起き上がれない」というお悩みに対し、「本当にそれだけが原因なのか?」という視点から、お話していきたいと思います。
パーキンソン病の方が感じる悩みにある「起き上がりにくさ」には、「もっと深い背景が隠れていることがあること」を知るキッカケになれば嬉しいです。

多くの方は、起き上がりにくくなったことに対し、「筋力が落ちた」と感じることと思います。この思考そのものは自然なことですが、私たち理学療法士が見ると、「筋力低下だけが問題ではないな」と感じるケースが多々あります。

リハビリの現場で、実際にどんなことが起きているのか。パーキンソン病と向き合う方々に、少しでも役立つヒントをお届けできたら嬉しいです。

では、一緒に考えてみましょう。

本記事の構成

「腹筋が落ちたから起き上がれない」って本当?

パーキンソン病の方からよくいただく言葉のひとつが、

腹筋がなくなってきたから、起き上がれなくなった気がするんです

というもの。

たしかに、腹筋の筋力が弱まると、布団やベッドから起き上がる動作が難しくなるのは事実です。
でも、「実際はそれだけじゃないんですよ」とお伝えしたくなることがよくあります。

そもそも、「腹筋」と一括りに言いがちですが、実際は4層に分かれています。

・最も表層にある腹直筋(いわゆるシックスパックの部分)
外腹斜筋(お腹の横に広がる筋肉)
内腹斜筋(外腹斜筋の下にある深い層)
・最も深層にある腹横筋(さらに一番深い層)

この4層の中の、どの層が低下しているかによって、起き上がりやすさも変わってきます。

白石

「“腹筋”という言葉はとても抽象度が高い表現なんです。特に高齢の方やパーキンソン病の方では、“どの筋肉がうまく使えていないのか”を丁寧に見ていく必要があります。

また、腹筋の筋力だけでなく、他にも大事なポイントがあります。

それは体幹の柔軟性です。

たとえば、背中やお腹まわりの柔軟性が落ちてくると、そもそも“体を起こす”という動き自体がしづらくなってしまいます。背骨の可動域が狭くなっていたり、腰や肩のまわりが硬くなっていたりすると、スムーズな動きができなくなるのです。

特にパーキンソン病では、筋肉のこわばりが出やすく、それによって体幹の柔らかさも損なわれやすい傾向があります。柔軟性の低下は、筋力低下と同じくらい、「起き上がりにくさ」に影響する要因のひとつです。

動作緩慢が「起き上がれない」と感じさせてしまうことも

そして、見逃してほしくないのが「動作緩慢(どうさかんまん)」という症状です。

パーキンソン病の特徴的な症状のひとつに、体の動きがゆっくりになるというものがあります。これは筋力の問題ではなく、神経からの“動け”という信号が筋肉に届くのが遅くなってしまうために起きるものです。

つまり、実際には動けるのに、「すごく時間がかかる」ために、「できない」と感じてしまうケースが多いんです。

白石

「“動作が遅い”ということと“できない”ということは、まったく別の話なんです。ご本人の中では混ざってしまいやすいのですが、リハビリの中ではそこをちゃんと分けて見ていきます」

たとえば、30秒くらいかけてやっと起き上がれたとしても、「筋力がないんだ」と決めつけてしまうことがあります。
でもそれは、“ゆっくりになっているだけ”かもしれません。

リハビリの現場では、動作の「スピード」や「質」も一緒に見ていくのが大切になります。
パーキンソン病の方にとっては、筋力・柔軟性だけでは本質が見えない場合が多いので注意が必要です。

「動作緩慢」の影響なのか、「筋力低下」なのか、「柔軟性低下」なのか、はたまた別の原因なのか。

“どの腹筋が弱っているのか”という視点をもたないまま、「全部の腹筋が弱いんだ」と思ってしまうと、リハビリ内容も的外れになってしまうことがあります。

たとえば腹横筋は、見た目ではわかりにくい深層の筋肉で、意識的に鍛えるには専門的な運動が必要となります。
腹直筋だけを鍛えても、根本的な課題が解決されません。

だからこそ、「起き上がれない=腹筋がない」、という単純な図式にあてはめるのではなく、

・どの腹筋が使えていないのか
・体幹はしなやかに動けているか
・本当に“力が出ていない”のか、それとも“遅れて動いている”だけか

こういった「多角的な視点で課題を見ていくこと」がとても大切です。

「課題分析」し、最適な方法を探すことが重要

今回は「できないところ」にフォーカスを当ててお話しましたが、私が理学療法士としていつも意識しているのは、「できないところ」だけでなく、「できている部分」や「活かせる部分」を探すことです。

パーキンソン病の方は、日によって調子が違うことも多いですし、「昨日はできたのに今日はできない」ということもよくあります。

でも、それは決して“悪くなった”というわけではなく、“波がある”というだけのことも多いので、過剰に心配しすぎるのは注意が必要です。

白石

「日々の変化に敏感になりすぎると、必要以上に不安になります。“今日はこうだった”で止めるのではなく、“こうだったけど、こう工夫したらどうか”と発想を変えるのが、リハビリの醍醐味です」

焦らず、でも放置せずに

起き上がれなくなってしまった時、つい「もうダメなのかも」と思ってしまうこともあると思います。
でも、焦らなくて大丈夫です。大切なのは、「今どこが使えていて、どこが使いにくいのか」を正確に把握すること。

リハトレスタジオでは、そのための細かな評価とサポートを行っています。
筋力だけでなく、柔軟性や神経伝達、日常の動き方まで含めて、トータルで見ていくのが「リハビリ」の考え方です。

一人で抱え込まず、少しでも不安があるときは、気軽に相談してください。あなたの今の状態に合ったプログラムを提案させていただきます。

白石

「起き上がれない理由が“筋力低下”だけじゃないと気づいた瞬間、リハビリはグンと進みます。“自分の体を理解すること”こそが、リハビリの第一歩です」

よければシェアお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

本記事の構成