タイトル:食べているのに痩せてしまう?筋肉を守る「栄養」の知恵
「しっかり食べているはずなのに…」という不安
「最近、ベルトの穴が一つ縮まった気がする」
「家族と同じ量を食べているのに、体重が減っていく」
「便秘が酷くて、お腹が張って食欲がわかない」
リハビリスタジオでお話ししていると、運動と同じくらい、こうした「食事・栄養」の悩みをよく耳にします。
「病気のせいだから仕方ない」と諦めてしまっている方も多いのですが、体重減少は放置すると危険です。
筋肉が落ちると、転倒しやすくなります。
栄養不足になると、免疫力が落ちて風邪をひきやすくなります。
何より、エネルギー切れの状態では、せっかくのリハビリの効果が出ません。
パーキンソン病の方の体では、少し特殊なことが起きています。
「なぜ痩せてしまうのか」「どうすれば防げるのか」。
ここでは、今日からできる具体的な対策をお伝えします。
なぜ、パーキンソン病は痩せやすいのか?
理由は大きく分けて3つあります。
① エネルギー消費が激しい(燃費が悪い)
体が勝手に震えたり(振戦)、筋肉が常にこわばったり(固縮)しているため、じっとしていても健康な人より多くのエネルギーを使っています。
また、薬が効きすぎて体がくねくね動く(ジスキネジア)場合も、マラソンをしているのと同じくらいカロリーを消費します。
つまり、**「普通の人よりも、たくさん食べないと追いつかない体」**になっているのです。
② 消化・吸収の力が落ちている
自律神経の働きが弱まると、胃腸の動きがゆっくりになります。食べたものが胃に長く留まり、お腹が空かない。栄養が腸からスムーズに吸収されない。その結果、量は食べていても身になっていないことがあります。
③ 飲み込みにくさ(嚥下障害)
喉の筋肉が動きにくくなると、硬いものやパサパサしたものを避けるようになり、知らず知らずのうちに食事量が減ってしまいます。
筋肉の材料「たんぱく質」と「薬」の関係
筋肉を維持するために一番大切な栄養素は、肉や魚、卵、大豆製品に含まれる**「たんぱく質」**です。
しかし、ここで一つ注意が必要です。
「お肉を食べると、薬の効きが悪くなる気がする」
そう感じたことはありませんか?
実は、パーキンソン病の薬(レボドパ)と、たんぱく質(アミノ酸)は、小腸で吸収される時に「入り口」を取り合ってしまうライバル関係にあります。
同時に摂ると、お肉の吸収が優先され、薬が脳に届きにくくなることがあるのです。
「じゃあ、お肉は食べない方がいいの?」
いいえ、絶対にダメです!お肉を控えると、あっという間に筋肉が落ちて歩けなくなってしまいます。
大切なのは**「タイミング」**です。
薬を飲んでから、薬が吸収されるまでの時間(約30分〜1時間)は、たんぱく質を控える。
その代わり、夕食や薬の効果が切れても大丈夫な時間帯に、しっかりお肉やお魚を食べる。
こうした工夫をするだけで、薬の効果と栄養摂取を両立できます。
便秘は「万病の元」であり「薬の敵」
多くの患者さんを悩ませる「便秘」。
お腹が苦しいだけでなく、便が腸にたまっていると、せっかく飲んだ薬が腸で吸収されず、効き目が悪くなってしまいます(ウェアリング・オフの原因になります)。
便秘薬に頼ることも必要ですが、まずは食事で腸を動かしましょう。
- 水溶性食物繊維:海藻、オクラ、納豆、キウイフルーツなど。「ネバネバ」「ツルツル」した食材は、便を柔らかくして出しやすくしてくれます。
- 水分補給:1日にコップ6〜8杯(1.2リットル)を目指しましょう。トイレが近くなるのを気にして水分を控える方が多いですが、水分不足は便をカチカチに固くしてしまいます。
無理せず「ちょこちょこ食べ」を
一度にたくさん食べられない方は、1日3食にこだわらなくて大丈夫です。
**「分食(ぶんしょく)」**といって、食事を5回〜6回に分けてみてください。
- 10時のおやつに、ヨーグルトやプリンを食べる。
- 15時に、小さなおにぎりやカステラを食べる。
- 寝る前に、ホットミルクを飲む。
これなら、胃に負担をかけずに、必要なエネルギーと栄養を確保できます。
当スタジオには、リハビリの専門家だけでなく、管理栄養士も関わっています。
「どんな食材なら飲み込みやすい?」「私に合ったカロリーは?」など、具体的な献立のアドバイスも可能です。
美味しく食べて、元気に動く。
食事は、あなたの体を作る一番の「薬」です。

