
はじめに
今回は「パーキンソン病と痛みの関係」について、脳の働きにフォーカスを当てて解説していきます。
「パーキン病といえば手の震えや動きにくさが目立つが、痛みも関係あるのか?」と思う方もいるかもしれません。医師によっては「痛みはパーキンソン病と関係ない」と考える方も多いですが、実際には パーキンソン病の方の多くが慢性的な痛みを感じている ことがわかっています。
パーキンソン病と痛みの関係について
パーキンソン病の患者が感じる痛みの種類
パーキンソン病の患者が感じる痛みには、さまざまな種類があります。例えば、以下のようなものがあります。
- 筋肉のこわばりによる痛み
- 関節痛
- 神経痛(しびれや焼けるような感覚)
- 姿勢の変化による背中や首の痛み
こういった痛みが日常生活に影響を及ぼすことも少なくありません。
痛みを軽減するための一般的な方法
- 薬物療法(鎮痛剤、抗パーキンソン病薬など)
- ストレッチ(筋肉の柔軟性を向上させる)
- マッサージ(血流を促進し、筋肉のこわばりを緩和)
これらの方法は有効ではあるものの、必ずしも十分とは言えません。近年の研究では 「痛みの感じ方は脳の働きと深く関係している」 ことが明らかになってきています。
痛みの処理に関係する「脳」の働き
痛みはどこで感じるのか?
「痛みはどこで感じるのか?」と聞かれると、多くの人は「痛い部分で感じる」と考えがちです。しかし、実際には 痛みは脳で処理される感覚 です。
例えば、腰や膝に痛みがある場合でも、痛みの信号は 神経を通じて脳に送られ、そこで「痛み」として認識される のです。
ここで重要になってくるのが デフォルトモードネットワーク(DMN) という脳のシステムです。
デフォルトモードネットワーク(DMN)とは?
DMNとは、何もしていないときに活動する脳のネットワーク のことです。
例えば、
- ぼーっとしているとき
- 自分のことを考えているとき
- 過去の記憶を思い出しているとき
- 未来のことを想像しているとき
このような場面でDMNが活発に働きます。逆に、集中して作業をしているときや運動しているときはDMNの活動が抑えられる ことが知られています。
パーキンソン病患者の脳では何が起きているのか?
パーキンソン病患者では DMNの働きが乱れやすい ことが研究で示されています。
2008年に発表された研究 “Beyond feeling: chronic pain hurts the brain, disrupting the default-mode network dynamics”(Baliki M N et al., Molecular Pain, 4:47, 2008)によると、慢性痛を持つ人の脳ではDMNのバランスが崩れている ことがわかっています。
論文の詳細は以下のURLをご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18256259/
この研究では、慢性痛の人は何もしていないときでも痛みを感じる部分(内側前頭前野)が活動している ことが示されました。
本来ならば、リラックスしているときはDMNが正常に働き、痛みを感じる部分は休むはずです。しかし、慢性痛の人は DMNの乱れにより、痛みの処理が常に行われてしまう のです。
内側前頭前野と外側前頭前野のバランス
内側前頭前野が過剰に働くとどうなるか?
慢性痛の人では 内側前頭前野 が過剰に活動することがわかっています。これにより、
- 痛みが続くことで感情をコントロールする 内側前頭前野 が過剰に働く
- その結果、不安やストレスを感じやすくなる
- 痛みに対する意識が強まり、より痛みを感じやすくなる
という悪循環が起こります。
外側前頭前野を活発にすると痛みは軽減できる
一方、外側前頭前野(論理的思考や判断を担う部分) が適切に機能すると、
- 「これは一時的な痛みだ」
- 「そこまで気にしなくても大丈夫」
と冷静に考えることができ、痛みに意識が集中しにくくなります。しかし、慢性痛の人では 外側前頭前野の働きが低下 し、痛みに対するストレスが増えてしまいます。
痛みを軽減するためにできること
外側前頭前野を活発にする3つの具体的な方法
- 考えることに集中する
- 読書やパズル、手作業(編み物・塗り絵・書道など)
- 脳を使うことで、痛みから意識をそらす
- 新しい趣味を見つける
- 普段とは違う道を散歩する
- 人と会話することで意識を痛みから遠ざける
- 運動を取り入れる
- 軽いストレッチやウォーキングを習慣化する
- 身体を動かすことで脳の活性化を促す
まとめ
- パーキンソン病の痛みは脳の「前頭前野」のバランスと関係している
- 内側前頭前野が過剰に働くと、不安やストレスが増えて痛みを感じやすくなる
- 外側前頭前野を活発にすることで、痛みを軽減できる可能性がある
- 読書やパズル、運動など、意識を痛み以外に向けることが大切
「痛み」と聞くと、つい体の問題と思いがちですが、脳の働きも大きく関係している ので、ぜひ意識的に「外側前頭前野」を活発に働かせてみてください。
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