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パーキンソン病にみられる、目に見えない“中枢性の痛み”とは

本記事の構成

1.「何もしていないのに、痛い」~それ、本当に“気のせい”?~

・最近、足がジンジンする
・腰が重だるくて朝起きるのがつらい
・病院で検査をしても、「異常なし」「加齢」と言われてしまう

でも、自分の体がいちばんわかってる。

“明らかに痛いのに、誰にもわかってもらえない”これが、中枢性の痛みのつらさです。

これは、パーキンソン病の方がよく経験する痛みのひとつ。
目に見えるケガや、筋肉の炎症が原因ではありません。

でも確かに存在する、「脳が作り出している痛み」なんです。

2.「脳」が痛みを作ってしまうことがある

私たちは普段、痛みを「ケガ」や「炎症」などの体の異常だと思いがちですが、実は「痛い」と感じているのはです。

たとえば、足をぶつけたとき、その情報は神経を通って脳に届き、「痛い!」と感じる。

つまり、脳が痛いと判断しなければ、痛みは感じません。

逆に言えば、脳が勝手に“痛い”と判断してしまえば、体がなんともなくても痛みを感じてしまうのです。

それが「中枢性の痛み」と呼ばれるもの。

そしてパーキンソン病では、これが起こりやすくなるメカニズムがあるのです。

3.ドパミンは“痛みのボリューム調整係”

パーキンソン病は、脳の中の「黒質(こくしつ)」という場所で、ドパミンという物質が減る病気です。

このドパミンは、

• やる気を出したり、

• 運動をスムーズにしたり、

だけでなく、痛みを調整する働きも持っています。

ちょうど、テレビの音量をリモコンで調整するように、ドパミンは「痛みのボリューム調整」をしてくれています。

でもそのリモコンが壊れてしまったら……?

本来なら気にならない程度の刺激も、強く痛く感じてしまうのです。

4.パーキンソン病で痛みに敏感になる理由

実際に、パーキンソン病の方の多くが「以前より痛みに敏感になった」と話します。

これは、ドパミンが不足することで、痛みを抑える脳のシステムが弱くなるから

さらに、以下のような特徴もあります:

原因不明なのに痛い(検査では異常が見つからない)

痛みの場所が変わる、広がる(最初は片方の肩だけ、次は腰や背中も…)

薬が切れるタイミングで痛みが強くなる(いわゆる“オフ”の状態)

これらが当てはまるなら、それは「中枢性の痛み」かもしれません。

5.ドパミンを補うと痛みが和らぐことがある理由

「レボドパを飲んだら、痛みも軽くなった」

これは珍しい話ではありません。

ドパミンを補う薬を飲むことで、脳の痛みブレーキが再び働き始めると、痛みのボリュームが下がっていくことがあります。

ただし、薬が切れると痛みもぶり返してくることがあるため、

自分の「痛みの波」と薬の効き方のタイミングを記録しておくことも大切です。

6.誰にもわかってもらえない痛みがいちばんつらい

中枢性の痛みは、見えない・測れない・伝えにくい

だからこそ、「気のせいじゃないか」「甘えてるって思われたらどうしよう」と、声をあげるのが難しくなります。

でも、忘れないでください。

あなたの痛みは、確かに存在します。

それはドパミンという“体内の痛み調整物質”が減ったことによって、脳の感じ方が変わってしまったことが原因なんです。

7.具体的な解決策

⑴.薬と痛みの“日記”をつけてみる

パーキンソン病の治療薬(レボドパなど)が痛みにどう影響しているかを、**「痛み日記」**として記録してみましょう。

たとえば:

• 朝8時にレボドパ服用 → 9時ごろに痛み軽減

• 12時ごろ薬が切れ始めて、腰の痛みが強くなる

• 午後はストレッチをしたら少し楽になった

このように時間と症状の変化をメモすることで、

医師との相談時にとても有益な情報になります。

⑵.軽い運動やストレッチで脳に刺激を

運動には、脳内で「エンドルフィン」「セロトニン」などの痛みを和らげる物質を増やす効果があります。

たとえば:

• 朝、イスに座ったままのゆっくり体操(肩回し・足上げ)

• 夜は軽いストレッチ(寝る前の首・背中のばし)

• リハビリ施設でのウォーキング補助やプールでの運動

無理せず、毎日少しずつでも体を動かすことが脳にも良い刺激になります。

⑶.痛みを話せる「人」をつくる

中枢性の痛みは、ストレスや不安とも深くつながっています。

だからこそ、「痛みをわかってくれる人」がいるだけで、気持ちが軽くなることがあります。

たとえば:

• 主治医や看護師、理学療法士に「痛みの話だけ」をする時間をつくってもらう

• 家族に「今日はどこがつらいか」を一言だけ伝える習慣をつくる

• オンラインの患者会などで、他のパーキンソン病の人と気持ちを共有する

「話すだけでも痛みがやわらぐ」――これは医学的にも証明されているんです。

8.まとめ:「見えない痛み」に、名前と意味を与えるということ

痛みは、感じている本人にしかわかりません。

とくに「中枢性の痛み」は、体に異常がないだけに、まわりに理解されにくいものです。

でも、今あなたは、「その痛みに医学的な名前がある」ことを知っています。

それは、“中枢性の痛み”というれっきとした症状です。

そしてその痛みは、「ドパミン」という脳内物質の不足によって起こっている。

そこに対処法があることも、今わかりました。

これからも、どうか一人で抱えこまないでください。

あなたの痛みには理由がある。あなたの痛みには、改善の糸口がある。

そのことを、一歩ずつ、自分自身に伝えていきましょう。

参考にした文献・論文(すべてURLつき)

• Ford B. Pain in Parkinson’s Disease. Clinical Neuroscience. 1998.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9934956

• Wasner G, et al. Central pain syndromes. Current Opinion in Neurology. 2003.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12858071

• 藤田晶子「パーキンソン病における痛みのメカニズム」
https://www.obirin.ac.jp/academics/postgraduate/international_studies/course_humanities/papers_doctoral/r11i8i00000a6tjd-att/23A_Fujita_Total.pdf

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